2013年1月16日水曜日

ナダルのトップスピンをひも解く

ナダルのフォアハンドについては過去にいくつか記事を書きました。

http://blog.negative.jp/search/label/%E3%83%86%E3%83%8B%E3%82%B9
あたりにいくつかあります。

ナダルのフォアハンドの特徴はスピンとパワーのあるボールを共存させていることです。
それはよく軌道で表されます。以前はスピンがものすごくつよくかつスピードのある球をコートの奥に入れるということは難しいことでした。球速とスピンの両立です。力を回転にかけてしまえば球速が、球速をかけなければスピンがということでした。

物理的にいって身体生み出す力が同一であれば、両立することは難しいです。

ということはボールを打つ時のエネルギーが圧倒的に大きいということです。

ラケットを振るパワーが強い -> 腕を振るパワーが強い。 -> 肩を振るパワーが強い

というこです。過去の選手に比べて明らかにナダルは肩を振る力が強いということです。
だからと行って肩周りだけを鍛えればいいわけではありません。

肩といっても力を一番発揮するのは胸の筋肉です。

以前にも何度か述べたように、筋肉は縮める時に力を発揮します。ですので筋肉ができるだけ伸びてそこからどれだけ早く収縮できるかによって瞬間的に発揮されるパワーがきまります。縮むのに伸びていれば伸びているほどいいということです。

ですが最初から伸ばしたままの状態から縮めればいいかというとそうではありません。
筋肉にはSSC というものがあります。瞬間的に筋肉を一気に伸ばすと反射により、
筋肉を守ろうと縮もうとします。この際に一番力を発揮します。(短時間で筋肉が収縮されます。)ということはどれだけ一瞬に筋肉を大きく引き伸ばすかが大事になります。


トップスピンの場合は特にラケットを回してスピンさせるわけですから、縦の動きが強い必要があります。胸の縦に縮む動きです。

ですから、ナダルは胸を縦に一気に引き伸ばします。その引き伸ばすほうはラケット側の首の根本を引くような感じです。


ナダルの一番の特徴は、後股関節の伸展により腰が非常に前に上に伸び上がるような動きです。



この動きをすることで腰が前に行きますので、首の根本を我慢することで、身体の前面に筋肉そしてラケット側の胸の筋肉がさらに引き伸ばされます。

それがまずひとつです。

次に首の根本を我慢したまま、脇を横に回転します。そうするとさらに首の根本が伸びるストレスがかかります。これを利用しています。



このときにはまだ首の根本は我慢したままです。横回転のちからすら縦のちからに利用しています。

これが2つ目です。

最後は非ラケットサイドの胸です。

ラケットサイドの胸を引いたまま、非ラケットサイドの胸を前に潰すように動かすと
(胸が互い違いになる感じです)ラケットサイドの胸から首にかけて伸びるストレスが
かかります。

これがナダルのフォアハンドのちからの源になります。


  • 腰の押し出し
  • 脇/腰の横回転 
  • 前胸の潰す動き

この3つの動きで一気に力を出すのです。ですがこれらは同時に行えません。
腰の押し出しで首のストレスをつよくして、そこから腰の横回転と共に
残り2つを一気にかけて、それをラケットのインパクトの寸前に収縮して利用します。

腰の押し出し -> 脇の横回転 + 前胸の潰す動きを同時

をよどみなく行います。このタイミングを熟知しているからこそ、リバースフォアハンドでもアレだけの強さのぼーるをうてます。

フォアハンド等で(特に強く早いトップスピンを打ちたい人はとくに)できだけ首の根本を我慢して、そしてそれを順序よく発揮するということに注意するといいです。

ひねり戻しとよくいいますが、それで横の捻転差ばかり意識してしまい首が引けてない例を
よく見ます。それでは力は発揮されません。


実はこの流れはサービスでも同じです。腰を押し出すのがトロフィーポーズです。
サービスの最大に力を出す流れをフォアハンドでやっているだけです。これだけのフォアハンドが打てればサービスは強いはずです。あるきっかけでナダルはサービスも強くなったのはそういう理由もあります。




2013年1月15日火曜日

ロリー・マキロイと石川遼

先日こんな記事がでてました。

遼 世界ランク1位「マキロイ打法」で米挑戦 


下半身の体重移動を重視した今までのスイングでは股関節に負担がかかり、それが腰痛につながることも判明した。
スイング改造を考えた時、頭に浮かんだのが、1メートル74、70キロの石川とほぼ同じ体格の世界ランク1位、ロリー・マキロイ(1メートル75、73キロ)だった。「ねじれを意識して自分は股関節も一緒に動いていた。足の使い方がマキロイとは全く違う」。両膝をほとんど動かさず上半身の回転を使って、石川よりも30ヤードほど飛距離を出す世界一の打ち方を早速、参考にした。


「しっかり肩を回そうという意識が、骨盤(腰)を、より右へ回転させていた」そうで、そこからダウンスイングに入ることで、股関節の動きが腰痛への遠因になることを戒めた。これを防ぐために「骨盤の動きを減らしてトップをつくる」と、腰と肩のねん転差の大きい新スイングへの改造に着手した。 (http://goo.gl/NX74a)


こんな感じの内容です(下は別の記事の引用です)マキロイに目をつけたのはいいのですが、それで良くなるとは
思えない面もあります。そこは難しいところです。




 



アドレスからトップまでです。トップでより右に股関節を回転させていたと遼くんは
言っています。本当にそうでしょうか?下の写真を見る限り差異はありません。
何が違うかというとアドレスの状態の角度です。マキロイは前傾が深く、遼くんより
腕とシャフトのなす角度が小さい。

尻に位置もマキロイのほうが深い。まずはここに差異があります。そして遼くんがきになるのはお腹が反り過ぎています。これが腰痛の原因かと思います。腰痛になるような腹部の筋肉のバランスになっています。アドレスの位置の股関節の場所の違いがトップの差異に現れます。アドレスで股関節が安定していると骨盤と肩甲骨の捻転差が出ます。それが足りないためひねった際に身体が逃げています。捻転差は腰を回しすぎないことで起きるのではなくてひねった際に股関節のちからが逃げないようになっているからです。
それが逃げてしまっているから捻転差が小さくなっているのです。



 

これは重心(と膝)がもっとも沈み込んだ位置です。

気がつくのは、マキロイのほうが肩も腰も開きが速いこと。
(一般的には早いのはよくないと言われます)
ですが、これはマキロイがより、背骨(と仙骨)に近いいちで回転しているからです。
これは股関節が安定してないと出ませんし、アドレスから起因するものでもあります。
股関節がより内側でするどく回旋してることが(腰が回転している)マキロイにはあります。
スイングの際のイメージでは仙骨を前に押しこむような感じです。

肩の開きは骨盤との相対関係なので、腰中心でするどく回っているから開いて見えるだけです。


 

 


インパクトの前後です。ここが飛距離と安定性の違いです。
マキロイは伸び上がるように、尻の中心部(仙骨)を前に押し込んでいます。
それに伴って勝手に膝がのびています。仙骨が前に押されているということは重心が
前にいってるということです。インパクトの時の重心移動の速度が違います。重心移動
とは腰が揺れることではなくて、(それも多少ありますが)仙骨がどれだけするどく前に移動するかです。

遼くんはインパクト後に膝がそとに逃げています。もっと仙骨が前に押し込めていればこうはならないのですがそれが弱いことが顕著にでています。

またマキロイのスイングが通常よりアドレスで腕とシャフトの角度が小さいのはこの動きのためです。

これが以前でも何度も取り上げた股関節の伸展(これが仙骨の前の押し込み)と股関節の回旋の分離です。



 


フィニッシュでも、違いがよくでています。仙骨が前にいききってなくそれで腰が回転しているため遼くんの場合は重心が後で回転してます。ですがマキロイはもっと前にいって回転してます。ですので右の脇がマキロイが前にでていることがわかります。

結果的にマキロイのほうが脇が開いていないのです。

アマチュアゴルファーはマキロイの真似をしたほうがいいみたいな記事を見かけます。
それは確かにそうなんですが、身体が調っていないと難しいです。
よりいいけども容易に真似は難しいという認識で少しでも近づくということがいいと思います。







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