2011年7月31日日曜日

なぜ日本人サポーターは軽薄に見えるのか

毎週等々力競技場でサッカーの試合を見ているのですが、昔から気になっていたことがありました。日本のチームのサポーターが私の目には非常に軽薄に見えていました。

魂がまったくこもってない!気合がたらん!

って感じです。昔はチャラチャラした野郎ばかりだからだ表情もなんかたるんどる!
とか昔の野球の監督のように思ってたりしたのですが、理由に気が付きました。

日本人は応援の際に体幹が使われていない

ということです。

拳ひとつ振り上げるのに手を上げるのに肩から先だけで動いています。
それに比べてヨーロッパでは体幹を使い全身で動きます。
そういったことが軽薄に見え、単調に見え、やる気がないように見える
ということです。

日常的な動きから、民族的な問題もあるようです。手先だけの動きというのは
容易に動かせるのでみなで同期をとったりは楽になります。しかしあまり迫力がでないのです

盆踊りを踊ってるような感じです。改善すればいいのか悪いのかというのはわからないんですがスポーツでも体幹が使えてない、普段の歩行でも使えてないというのを考えると
改善したほうがいいんじゃないかなぁと思います。日本古来の動きでも体幹を使うものはあります。

古来からそのような動きがあるのに、
どのように盆踊りのような動きから体幹をつかった動きになっていくのでしょうか?

このあたりは私の疑問です。これはいまの日本人の日常的な動きから体幹を使うような
動きにもっていくのは自然にはできないということです。やはり体幹をきちんと使う
ことで腰痛や肩こり等は予防できますし、軽い症状であれば直せます。

普段の歩き、姿勢等で体幹を使う動きを常に意識することが大事です。

2011年7月30日土曜日

理想の開発環境でクルーズ&アトラスに座って腰痛になってしまえばいい…エルゴノミクスチェアの危険性と動的安定性

ちょっと前ですが理想の開発環境 って記事を発見しました。

mixi のエンジニアの椅子がほとんどクルーズ&アトラスになったようです。


ここにも書いてありますね。
この記事をみた時twittterで


「クルーズ&アトラス とか腰壊しそうな椅子を身体工学のとかで踊らされて座ってるやつは皇潤かってるお年寄りと大差ない。」


とか書いてしまいました。

腰を壊すには理由があります。体幹の筋力を低下させるのが主な理由です。

これは椅子に限らず姿勢を矯正するような器具でもだいたい当てはまる話です。

人間の体は各関節でバランスの取れた姿勢が大事です。バランスの取れた姿勢というのは
無駄な力が入らずに筋肉を均等に利用された状態です。

棒の上に棒を乗せたような状態

が筋肉で支えるのが理想的だとされています。しかし多くの人はそのバランスを取れた状態にはなってません。
それが様々な痛みであったり、スポーツで力を出せない、ムダな動作が多いといったことをうみます。

動的安定性と筋肉バランス

そして、股関節と肩関節は球状関節になっておりそれによってさまざまな動きになっているのですが
その関節はその分バランスのとれた状態になるのが難しくなっています。(それを動的安定性といいます。)
動的安定したポジションでは力は抜けているが筋肉に適度に刺激がはいっている状態です。

スポーツなどではその状態からの始動が必要になります。

しかしほとんどの人は筋肉のバランスが崩れておりそういう状態になっていません。

そういう最適な状態でない場合、人間の体は代替行為によって変なひねりがはいっています。

当然,スポーツでは最初から力をフルで出せない。始動が遅い。当たりに弱い等色々でてきます。筋力を使い切れない
となります。

若い時は筋力があるのでそれほど問題ないのですが(スポーツ過剰な負荷がかからない限り)

そして筋力が低下していくと腰痛や肩こり等が増えていくわけです。

スポーツの怪我でもだいたい同じなのですが代替行為をして変な筋肉に力がはいると
またそのために別の関節も変なポジションになり伝播していきます。そうすることで
別の箇所がいたんだりもします。

その根本になるのが身体操作の基本的な箇所である股関節と肩甲骨に関連した箇所になります。

その理由は人間はこの2つの関節は球状関節なので動的安定性が確保されたポジションを取ることが難しい
からです。

膝痛、腰痛は股関節から
肩こりは肩甲骨から来ます。

なぜこんな話をしたかというと

エルゴノミクスチェア

と呼ばれるものは人間の最適な姿勢を取らせることを目的としているからです。
そこに大きな落とし穴があります。強制的にその状態をつくると筋肉を使わないですみます。
それは筋力低下するということです。クルーズ&アトラスに至っては骨盤後継の姿勢を
取ります。それで長時間座ってるということはずっと寝てるのと同じだということです。

寝たきり老人養成ギブス

みたいなものです。治療であまりにも痛い場合にコルセットをつけるのは大事です。どうやっても筋力
だけでは支えられないわけです。しかしそれには別途リハビリによって鍛える必要があるわけです。

姿勢を矯正するような器具はたくさんありますが。可動性がないものはこういった問題を引き起こします。
また人の体の状態というのはさまざまなので体のことを考えた場合はもうフルオーダーメイド
のようなものでないといけません。

局所だけみてものをつくって後々問題になる開発というのは日本の企業の得意技な気がします。
身体工学とか言っているのに気がつかないのでしょうか? 直ちに害は確かにありませんが
10年とか5年たって問題がでてくると思います。

ってことで私にとってはクルーズ&アトラスが強制される開発環境なんて

地獄の開発環境

です。

mixi はみなさんまだ若いからいいでしょうが、30代になってそして腰をいわしてしまうかたがでてしまうんじゃないでしょうか?

すべてのエルゴノミクスチェアが悪いとは思いません。しかし日本のものはクルーズ&アトラスのように視野が
狭く短期的なことしか考えていない気がします。ただぶっ壊れるだけならいいんですが人の体までぶっ壊すのは
さすがに問題です。アリとキリギリスみたいなものです。
導入した担当者はあれを100回ぐらい音読したほうがいいです。


椅子を選ぶのに注意して欲しいことは 前の文章 の姿勢をとれることです。追加して骨盤前傾です。
骨盤の前傾が骨盤回りの筋肉に刺激を入れるので大事です。またいろいろなところでも言われていますが
正座というのは非常にいい姿勢です。しかし正座は膝を折ったままにするため膝を壊します。
膝に負荷がかからない正座のような状態が取れる椅子で動的安定性が確保できるというのが
いい椅子です。

人間工学で言われる目の高さ等は非常に大事です。それを確保しつつ背もたれがない椅子でただしい姿勢を取る
ほうがよっぽどましです。(疲れるでしょうが)

ちなみに私はアーロンチェアを動かせるようにした状態でつかっています。固定させると上のような問題が少しでてきますので。


2ch で意見をくれる人がいたので別エントリで追記しました




2011年7月26日火曜日

体幹の重要性 ... 股関節と肩甲骨の古くて新しくて近くて遠い関係

ずいぶん前から体幹の重要性があちこちで言われています。

軽く運動してやるぜ的な雑誌ではさかんに言われています。

スポーツ界でも普通にいいますね。
長友佑都だったり、色々。

ではなぜ体幹が重要なんでしょう?

日本人は基礎とか基本が大好きです。そしてその不完全な状態の
原理原則にしばれてしまいます。そして歪んでいったりしまいます。

そういうのに反応しちゃう民族性なんじゃないかな?

とかもちょっと思います。

スポーツジムもちょっと困っているんじゃないかと思います。
体幹のインナーマッスルは主にマシンで鍛えるわけにもいかず、
スポーツジムの意識できる筋肉の一部だけ分離させて効かせるというトレーニング
は通用せず大変です(体の連動で効かせないといけないので)

身体操作の基本原理のまとめ で

「大事なのは股関節と肩甲骨の可動範囲を最大にして加速させて使うことだ。」

と記載しました。その股関節と肩甲骨をつなぐ部分が体幹
なのです。それらをうまくタイミング合わせて連動するのに必要なのが体幹の力
だからです。


  • 体幹腹部の腹圧の大事さと肩甲骨と股関節の関係
  • 胸郭の柔軟性


の二つについて主に記載していきます。

体幹腹部の腹圧の大事さと肩甲骨と股関節の関係

ピッチャーは腹筋が衰えることで球速が衰えていく
の理由もここだったりします。この体幹部の動きについてそれを主眼とする考え方も
あります。胴体力と呼ばれるものはそうなります。また2軸動作とかいったものが
あるのもこの体幹部の役割をうまく解決しようという意図です。しかし現状の理論の枠の
中にはめても誰も完全には解けていません。なのでいろいろなものを見て自分で理解して
自分で判別して利用していくのがいいと思います。この文章もその中の一つです。


肩甲骨と股関節(骨盤)は体幹でつながっており、その部分の柔軟性や筋力で
肩甲骨と股関節の可動範囲は大きく変わります。

その際にその可動性に大きくかかわりがあると言われているのが仙腸関節です。

骨盤力なんかでも話題にでています。945ベルトとかいうインチキくさい商品もあります。
(とか言うと怒られそうなので怒られそうになったら消します。w)

右肩を後ろにひねる場合は左股関節が前へ(右肩が前へ出る場合は逆)
左肩を後ろにひねる場合は右股関節が前へ

という運動は骨盤の分離運動といいます。これで可動域が変わりますし関連性がわかります。
股関節と肩甲骨は対角線の関係にあるということです。
また股関節と肩甲骨は左右でも関係あります。

右肩が前に出る動きは左肩が後ろに引かれる可動範囲に影響されます。

それを支えるのが体幹部です。

体幹部の骨は胸郭には肋骨等があり、このおかげで安定性があります。
しかし腹部には肋骨ようなものはありません。この変わりをしている
筋肉があるのです。その安定性の度合いを腹圧といいます。
この腹圧の低下が肩と股関節の対角線の柔軟性を落とします。
これがピッチャーが衰えるという要因です。

腹圧が衰えるとコルセットの役割をしていた腹筋の一部がゆるみます。
体横に倒れたり、またゆるくなります。そうすると肩甲骨胸郭が
胴体とまったく同じ動きをしてしまって力を発揮できません。

野球や空手の初心者は胸郭と胴体が分離して動かすことができませんが
それはそういう理由です。年とったおじさんで腹が前に出てる
姿勢とか典型的に腹圧が衰えている状態です。年をとって見える姿勢
というは運動的にも適切に力を発揮できない姿勢ということです。

また胸郭の柔軟性で話をしますが胸を張れといいます。そうすると

オードリーの春日のような姿勢

と勘違いしていますがアレはダメです。彼も腰をきっとそのうち壊します。
あれはそらしているのは腹部であって腹部が固定されていません。
(姿勢をよくしなさいと言われて子供がとってしまう姿勢でもあります。
間違ったことを言う親がまた事態を悪化させていきます)

お腹をひっこめて固定する意識が大事です。

腹部を固定する力があって肩甲骨の力を発揮できるのです。

2ch を覗いいたら

肩甲骨って使うの使わないの?意識できないよ?

みたいな話がありました。上のような問題を解決してないと分離して
動かせないので意識なんてできません。だから無意味だという話
がでてくるのでしょう。

また二軸動作のような話が出てくるのは股関節と肩甲骨という大事なものは
左右にあるということが理由だと思います(足と手は2本ずつあるからとも言えます)
しかし左右だけでくっついてるわけじゃありません。間には背骨がありその回りを
腹筋群が固定しています。ですので2軸動作で全てを語るのは無理があると私は
思っています。体の中心が一本である以上そこにねじりはくるのです。(背骨が2本走って
いれば話は別です)

肩甲骨と股関節は対角線で意識が大事です。それを中心でこするように使う
と腹筋をしっかり固定しますのでそういう意識をすることです。

胸郭の柔軟性について

次に気になるのは自分も含めてなのですが、胸郭の柔軟性です。腹圧に関連した
もう一つ大事なものだと思います。腹圧で腹部を固定して胸郭を動かすわけですが
これも現代人は固いことが多いです。特に日本人はそうです。腹圧を高めお腹を
引っ込めた状態で胸を前後に傾ける動きが力を出すには大事ですが
みなさんうまくできません。そのあたりをほぼ使っていないからです。

古武道などでも胸郭を上げて落とすというのですがそういった動きができません。

この前渋谷の街を歩いていたら愕然としました。姿勢としては胸郭は胸下側が前でるように
傾き、肩甲骨側はかすかに丸まっているのがいいのですが(真の意味で胸を張る)そうなってる人は皆無でした。

これは日本人の骨格の関係もあると思います。ですが特に若者はひどいようです。
こういった姿勢についてはあちこちのサイトに記載があると思いますが
これは運動の際に力を発揮するのにも大事なことになります。

腹圧を効かせた状態で胸を張り前後に傾けると背中側(肩甲骨)に刺激が
いきます。最初は難しかもしれません。それが体幹と肩甲骨をつなげる力なのです。
また注意点として、特に猫背の方の場合ですが肩を大事にします。
肩を下げ後ろにしっかり引くことが大事です。


  • 腹部の固定
  • 胸郭だけで反らす(上げるような意識でもいい)
  • 肩は下げしっかり後ろ側に引く

この姿勢がうまくいくと胸郭だけ腹部と分離して左右に動かす感覚がでます。
力ははいっているけど緩んでるような感覚です。

この傾斜は肩自体の可動範囲に比べたら小さいですが
より根本での動きなのでそれが末端に達したときは大きく作用します。

テニスのジョコビッチや野球の160km を投げるような選手の胸郭を見て頂ければ
と思います。

体幹部の筋肉や感覚というのはなかなか感じることが難しいです。そこで大事
なのが日々の歩行になります。日々の歩行で対角線の股関節と肩甲骨
の連動と腹圧、胸郭を意識して常にあるくことが大事になります。

体幹ランニング

こちらあたりはなかなかいいと思います。私はこの走り方をストレッチ変わりにしています。
このまま歩行にすることで日々意識もできます。コレをアタマにいれた状態で
最近ランニングしている方がいると思いますがそういう人を見てもらえると
また見地が広がると思います。

結局、特殊なトレーニングが大事なのではなくて日々の生活が大事だ
という話になってしまいました。

(とりあえず勢いで書きましたのでまた絵とかは後で入れます)
胸郭の柔軟性について、追記しました(肩に関して)


続編 理想の開発環境でクルーズ&アトラスに座って腰痛になってしまえばいい
体幹の筋力低下の危険性について書いてます。

2011年7月11日月曜日

身体操作の基本原理のまとめ


テニスのフォアハンド、サービス
空手の突き技、蹴り技
野球のピッチング、バッティング
等全身を利用したフォームの際に基本となる身体操作のポイントがある。

そこの前提を忘れたり、勘違いすると大変な目にあう。基本をおさえて見ると色々と理解できていく。
てことで基本的な部分をまとめてみた。

よく全身を使うのは, 下から力をうねらせるよう使えという。
一般的に言う「うねり動作」だ。

ではなぜ下から動かすのか?
その理由について知っているのだろうか、この原則を考えないと
自分の体で調整する際、間違った動きなのか正しい動きなのかそして
その判断をどうするのか?といったことができず。間違えた動きが悪化してしまう。

身体操作の際に大事なことは、インパクトの際に
最大速度を出す
対象物に対して適切な方向に強い応力を与える
の二つである。

その速度と力を生み出すのは

  • 手先の動き(肩から先)
  • 肩の回旋(肩甲骨)
  • 尻(腰、股関節)の回旋


の3つだ。

体は当然すべてすべて繋がっており、

基本的にはこの三つを最大速度を出せば威力スピードが出ることになる。








ではなぜ下から体を動かすのか?

(個々に考えると)動作にかかる時間がそれぞれ異なるからである。
手先の動きがもっとも短時間ですみ、
尻の回旋がもっとも時間がかかる。

次に、神経信号は人体の体幹のほうが単純なので、操作はしにくいが短時間で到達する。手先に向かえばむかうほど複雑で
精妙な動作が可能であるが遅くなるのだ。ということは体幹から動くことになる。

個々の動きでは停止された状態から加速していき、減速して停止する。
よって、すべての動きが最大加速の状態でインパクトに達することが大事である。

最大の加速状態にもっていくには回旋の角度が大きければ大きいほど加速しやすい。
その回旋の角度はそれぞれの関節の可動範囲に依存する。また筋肉というのは基本的に縮む
動きでしか力を発揮しない。そして最大に筋肉がのびた状態で縮み始める際にもっとも力が
出るのである。(その縮み始める力を初動に利用する)

俗にタメという言われるものが必要になるのは筋肉を最大にのばし関節の稼働範囲限界までを利用するためである。

すべてにタメを作りほんのちょっとだけタイミングをずらしてすべてを動作させて加速させる。
これで力は発揮される。

個々の姿勢、身体的な衰えでそのタイミングがあわなくなることで年齢を重ねて力を発揮しにくくなる。
こういった意識しつつ、その原則にしたがって原因を探っていくことが長い時間
衰えずにスポーツでうまくやっていくことを可能にする。

何度も言うが、
大事な点は股関節と肩甲骨の回旋を最大まで利用すること、またその角速度の最大地点を合わせる
ということである。

股関節は初動に力が必要なので上の図のように移動の力を最初に利用する。これは大きい必要はないが
これを効果的に使うべきだ。

股関節と胸郭(肩関節)を利用する。

力を発揮させる際には左右が同時に逆の動きをすることで力が発揮されるのだその意識が大事である。

股関節でいえば

右股関節の外旋+伸展
左股関節の 内旋と屈曲


肩関節ではタメた状態では
右側 背中側に引きこみ肩甲骨は下方旋回
左側 胸側に引きこみ肩甲骨は情報旋回
胸郭から上を反らせる。  

そこから一気に正反対の動きをする。
この動きをするときに注意することがまず体の中心でこすり合わせるように
行うことだ。それをわすれると体がよれてしまう。
よれてしまうと個々の動きが加算されない。よれた動きで減らされてしまう。

とくに股関節と胸郭の連結地点である腹部でこすりそして固定
されるようにするのが大事である。野球のピッチャーはだいたいが腹筋が
弱ることで衰えていく。
腹筋が弱り加速のタイミングがあわなくなる、よれて力が逃げてしまう
というのが主な原因ではないかと思う。






いろんな競技を見る際に股関節の回旋がどれだけ一気に行われるか
胸郭がどれぐらいしなってお辞儀しているかどれだけ胸郭が横に回旋しているか
を基準にみるとだいたいの問題点はみえてくる。細かい因果はまた別だが。

以上のことを考えると股関節と肩甲骨の動きを行うまで力をリラックスしてため
そこから一気に力を入れて一瞬で発揮するような動きが効果的であることがわかる。
リラックスが必要だということは各所で言われるがリラックスしてないと無駄な力が
はいりやはり個々の動きを阻害してしまうのだ。

また細かいことは気がついたら書きます。







2011年7月1日金曜日

テニスのフォアハンドにおける身体操作の歴史

スポーツの上達は基本的にうまい人の動きを真似て再現することである。
昔はどのようなフォームが最適かというのは基本的に個々の感性に依存していたためその傾向はより強い。
スポーツバイオメカニクスでも基本的にはトップの選手の動きを抽出して再現性がある情報として取り出すことであり.
それは同じだ。

その情報の抽出の仕方に歪みがあったり、間違ったものが基本として定着してしまうこともよくあることだ。
日本は過去の情報を尊重しすぎるのでその傾向が高かったりする。
(そういうのがガラパゴス野球とかガラパゴステニスとか言われたりもする)

トッププレイヤーを真似た次世代のホープが、またそれを変える。そしてそのホープはトッププレイヤーに
なる。という連鎖によって
フォームやプレイスタイルは変化していく、そういった意味でもフォームとその身体操作
の歴史的変化を見ていくと非常に面白い。



テニスではスクエアスタンスであったものがオープンスタンスへと移行してきている。

身体的にはほぼ移動の力で打っていたものを体幹の回旋をつかった動きに比重を置いたものに変わっている。
より短い時間かつ小さな動きでパワーを出すための流れでもある。

オープンスタンスが登場し発展してきたフォームという観点で歴史的な流れを考えてみるとおもしろそうなので
見てみる。

このきっかけは
youtube にある下の動画だ


ボルグとフェデラーのフォアハンドの比較である。
身体操作という観点でみると両者を比べると雲泥の差がある。
野球のような競技ではこういったことは少ない。

昔の偉大な選手は現在の選手より
身体操作という面でみると上だったりすることは野球ではある。時代により
競技で求められるものが変化するから変わった部分はあるにしても
テニスでは常に新しい選手のほうが明らかに身体操作はうまい傾向にある。

身体操作が変化していった歴史を見ることもでき
非常に興味深い。





フォアハンドで威力のあるボールを打つという点で大事なことは
股関節の回旋の可動範囲を大きくしそれを短時間で行うことだ
それを体幹に伝達し肩周りの力といっしょにすることでインパクトの瞬間に力を集約させる。

おおざっぱにまとめると以下の大事な点は三つになる。

  • 股関節の回旋がするどく角度が大きく回旋するか
  • 体幹のよじれきちんと股関節の回旋の力を伝達できているか、体幹のしなりが起きているか
  • 肩の回旋でゼロポジションになっているか、可動範囲をしっかりつかえているか

これが時代とともに順次解決されはじめていっている点が非常に面白い。

実際に比較に入る。

ボルグとフェデラーの比較

まずはボルグとフェデラーの比較画像フェデラーの動きは上の3点がすべて解決されているという点で非常に分かりやすい。


ボルグの動きとしては
まだ移動の力で打っていること。これはスクエアスタンスの移動だけの力で打っていたショットの流れから来ていると考える
ポジションに入って

膝で移動をしてあわせてそこから股関節の回旋が始まる。
この動きの過程でフェデラーはほとんど下半身は変化がないが、ボルグは体を膝でボール方向に移動している。
ボルグはこの移動の力が大きい。しかし膝が折れすぎている。これがのちの股関節の回旋の邪魔になっている。

詳しく述べると、(わからないって人は読み飛ばしてください)

下半身をつかってすむーず回旋するには左足がスムーズに離れないといけない。それがないということは
姿勢反射でリセットがかかって力が逃げてしまうということだ。基本的に重心が足首 膝 股関節にまっすぐ
のったまま回旋をスムーズのすることが理想である。膝が折れると膝の回転半径が大きくなり股関節の柔軟性が
必要になる。その柔軟性があれば問題がないがそれがないと体にリセットがかかり回旋の力が逃げてしまう。


またこれを考慮して打ち方であるためテイクバックもそれも合わせ大きくなっている。
移動をすることでボルグの場合は右太ももにさらにためをつくっている。フェデラーにはそれがない。
これは移動によるメリットである。しかし、常にこれが必要だということは迅速に打つことには弊害だ。
一枚目から2枚目の過程では、股関節にさらにテイクバックが入っている感じである。



股関節の回旋とは俗に腰を回すということだ。英語では尻を回すともいう
解剖学的(ってほど微細ではないが)には

右股関節は 外旋し続ける-> 内転
左股関節は 内旋 ->  外旋

という動きで実現する。伸展という股関節を伸ばす動き含まれるが大きい動きは
上に書いたものだ。

外旋とは膝を外側に回すような動き。内旋は膝を内にいれるような動きだ。
外転とは膝を回転させないで膝を外に開く動きである。
内転とは膝を回転させないで足を閉じる動きだ。

右股関節で言えば、右足側を固定して股関節を外旋させると、骨盤が反時計回りで回転するこれが腰を回すと俗に表現されるもの。


インパクト手前であるがフェデラーがより右股関節の外旋で回しているのに対して
ボルグは膝の屈伸の力で打っている。この段階では股関節の回旋が始まっており
膝の屈伸は位置を調節する以外の意味はない。

ボルグは股関節の回旋を体幹への伝達ができていないのと股関節に柔軟性がもともと
ないのに大きな可動範囲が必要とする回旋を行うとしているので力が逃げてしまっている。
これは前の段階で股関節がひらきすぎていることも関係がある。

またフェデラーは胸を張って見えるがこれは股関節の回旋をしっかりし体幹のひねりをきちんとつかっているため
体幹(もしくは胸郭)のしなりがでている。よく胸を張って打てというのはいろんな競技で言われるが
それは意識しても意味がなく、正しい動きと胸郭の柔軟性によりもたらされる。

ボルグの場合は股関節の回旋に上体が引っ張られていないため上体が前にかぶったままである。股関節の回旋を
上体に伝えるためには胸郭を柔軟にし、腰からアバラ骨の当たりを決してそらされないように固定するような動きが
大事である。その感覚はボルグの場合はあるようだが(上体が前にかぶっているため)そのインパクトまでの過程で
胸郭をしならせるような動きを作る方法がわかっていないように見える。

体幹のひねりが正しく使われるためフェデラーのほうが両肩のラインと右肩<->右肘のラインが一直線に近い。
より強いショットや回数を重ねるとボルグのような打ち方では肩肘の故障をおこす。

しかし、より一直線に近いということはラケットが遠くなり遠心力がかかるため、ボルグの時代のほうがラケットが重かった
ことを考えるとそれに適応するためとも考えられる。

左肩から右肘までのラインが一直線でインパクトの瞬間まで右肩が前にでてないことが大事である。ボルグの場合ははやく肩が前にでてしまっている。



ボルグは左股関節のたたみ込みが甘いため(この操作は非常に難しい)
上の股関節の回旋の際に左股関節は内旋-> 外旋という動きを説明したが
このたたみ込みが外旋である。このたたみ込みができないと骨盤がまわりきらず回旋が固定されてしまって
右股関節の力が前か植えにのびてしまう。

当然骨盤はみな繋がっているので左側でまわらなければよりするどく回らないし右骨盤が上に浮いてしまう
それをよく表している。
(これはボルグが移動しながら打っていることにも関係がある
前方に移動しながら打っているので左股関節のたたみ込みができないのでより伸び上がるということ
)

さすがに20年の変化は大きくまったく違うといってもいい代物だ。


アガシからの変化

ボルグからアガシ前の時代までは身体操作的にはそれほど大差がない。体力は当然ついただろうが
アガシのあたりから時代は動きはじめる。これは身体操作を見つめたものではなく
アガシの目指すもに対して最適化された際にそれが身体操作的な進化になったと考えられる点も
おもしろい。




この二つを見ると分かるのはボルグは膝で調節をして重心の移動をしながらあわせていたのをそれが無くなっていることだ。
また膝の大きな屈曲がない。
これはサーブ&ボレー全盛の時代に強く速いボールに反応するためには、膝で合わせるのは初動としては反応が遅すぎる。

なぜ遅いかというと、

筋肉によっては神経信号の伝達に時間がかかる。体幹に近い部分を初動とすればいいが膝で
合わせるような動きとするとそれは反応時間を遅くしてしまう。



そして無駄が多い。

それを解決するために、ポジションに入り右股関節に絞り(ため)を作り、そこからの回旋で合わせる動きになっている。

膝で合わせるという悪しき風習がなくなっている。

以下はインパクト直前。


股関節の回旋は行われたみ込みも(左股関節の内旋外旋という動き)すこしできはじめているが、アガシ自身にも股関節の柔軟性に問題が
あるためか、テニスの基本を作る段階ではボルグのような動きで、プロに近い段階で部分的に修正したからかもしれない。
それが回旋の角度が小ささに現れている。

体幹のひねりが弱いことと。股関節が回旋しきっていないため、胸郭のしなりがなく、
フェデラーに比べると胸の張りがなく肘が低い。ボルグよりもよくなった部分として
背骨を地面に対して垂直に立てるという行為を行っていることだこれによって体幹はボルグと比較するので
あれば、使えていることになる。

ボールの高さに対してどのように体で合わせるのかいうときに

* 膝で合わせる(ボルグ式)
* 肘で合わせる(アガシ式、まだこの方式の選手はたくさんいる。土居美咲以外のほとんどの日本人選手もそう)
* 体幹(上体)の傾きで合わせる(フェデラー、ナダル等のトッププロ)

と3種類ある。

最初に膝であわせる

体幹をうまく使い、そして膝でボールをあわせないということを考えたとき
ボールの高さを肘で合わせているのがいいと感覚でつかんだためでないかと考える。

(股関節を回旋させるためには重心移動の力が必要であり小さな重心移動では打てなくなる)


肩の回転は常に同じで肘だけで合わせると
肘から右肩を経由して左肩までのラインが一直線にならなくなり故障の原因となったり(ゼロポジションが作れない)
威力が落ちていく。アガシはこの動きだ。移動で膝の動きが使えないときに代替行為か自然とあみ出した
方法ではないかと思う。


そして体幹の傾きで合わせるのはフェデラーがわかりやすい。

だいたいのボールで
フェデラーの動きは基本的に両肩のラインの延長につねに肘がくるため
現状ではもっとも最適なのは、フォアハンドの際は股関節の回旋がすぐできる姿勢でポジションに入りボールの高さは上半身の傾きで合わせるような動きだ
と考えられる。


大雑把に考えると歴史的な流れでは

オープンスタンス化  
-> 膝で合わせるのではなく腰で合わせ体幹の力を使って打つ   
-> ボールの高さに体幹の傾きで合わせ、胸郭のしなり、肩の回旋をさらに最大限に活用する

という流れだ。完全ではないまでもアガシによってフォアハンドストロークの身体操作そしてテニスが
大幅に変わり始めたのは確かだ。

全英、全仏と見ていてやはり非常に気になるのはテニスプレイヤーは
野球選手に比べて股関節と胸郭が非常に固い選手が多いということだ。

これは若年層の練習カリキュラムに問題があるのではないかと思う。
そういう訓練をしてないということだ。

そういう意味でナダルの育成の過程というのは異端だが、なぜ彼がああなったのか
というのは多くの育成に大きなヒントがある。

フォアハンドに威力のない選手はだいたいサービスも弱い。
それはサービスでは胸郭をおもいっきりしならせて打つが、
胸郭のしなりが出せてない選手は総じて威力が足りない。(フォアハンドよりもサービスは
より股関節の回旋よりも胸郭のしなりのほうが影響を及ぼしやすいため)

胸郭のしなりがでていてもサービスで股関節の回旋が使い切れてない
選手も多い。これが使いきれるとアンディロディックのような凄まじい威力が
出るんじゃないか?という選手も多い。

テニスの基本的な身体操作はフォアハンドとサービスに集約される。
その関連性と特性による変化バリアントのつけ方で決まるがそこがまだ
全般的に行われていない印象がある。

フォアハンドの歴史的変遷としておもしろいのはもう一つある
それはナダルへ至る過程だ。基本構造はフェデラーと変わらないが
身体操作としてナダルのほうが明らかに優れていて力を使えている。

フェデラーがあの動きは才能も大きく作用しているがフェデラーにできないことが
ナダルにはありなぜああなったのか、そして素質、才能面ではフェデラーより
絶対劣っていた存在であろうナダルがフェデラーよりも体が使えているのか?

とか色々考えるとおもしろいのでまた考えてみる。




















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